政府と丸紅、三菱商事、日本工営などは官民連携でフィリピンやベトナムなど新興国での水事業に参画する。事業化に向けた調査費を国際協力機構(JICA) が負担する。安定収益につながる水道事業運営は世界的な市場拡大が見込まれているが、仏スエズグループなど欧州の水メジャー(大手専門事業者)が先行し、 中国・韓国勢の追い上げも激しい。現地政府や日本政府が支援するPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)と呼ばれる官民連携方式で市場を開 拓する。
フィリピンでは、丸紅が日本工営などとマニラ市西部でマニラッド社が手がける水道運営事業への参画を検討している。
同市では水道事業の民営化後、東西を分け東側は三菱商事が資本参画するマニラウォーター社が約600万人に給水している。一方、西側で約850人に給水 するマニラッドには当初仏スエズが資本参加していたが、その後撤退。浄水場から送られた水が漏水や盗水で途中で失われる「無収水率」が約50%と高く、技 術力のある日本への期待は大きい。
丸紅は、産業革新機構などとチリで第3位の水事業会社を買収するなど、現在手がける総給水人口は約500万人。これを新興国での展開で早期に2倍に引き上げる計画だ。
三菱商事も、日本工営や荏原、日揮などと共同で出資する水道事業関連会社の水ingと共同でベトナムの南部カントー市上水道整備に参画したい考え。同社も政府系ファンドと共同で豪州第2位の水事業会社を買収し、事業を強化している。
新興国の経済成長を背景に、上下水道整備など水処理需要が高まり、世界の水事業の市場は2020年には07年の倍の約72兆円に倍増すると見込まれてい る。ただ、新興国では価格競争に加え、貧困層からの水道料金の徴収など課題もあり、日本企業の事業拡大には官民連携がカギとみられている。(上原すみ子)