ベトナムで鉄道整備事業が加速している。同国 の運輸省は2020年までに、南部ホーチミンを中心に、国営ベトナム鉄道初の電化路線8区間を新設することを明らかにした。総工費162億ドル(約1兆 5750億円)の大規模プロジェクトが始動する。国営ベトナム・ニューズなどが報じた。
新設される区間は、ホーチミン-南部カインホア省ニャチャン間(411キロメートル)やホーチミン-南部メコンデルタ直轄都市カントー間(174キロ メートル)のほか、15年着工予定のロンタイン国際空港とホーチミンを結ぶ路線も含まれる。
新路線はすべて電化され、複線となる。ベトナムの国鉄は現在、ディーゼルエンジンを動力としており、電化により環境への負荷も低減できるという。また、 新しい技術を導入し、列車による騒音を低減させ、住宅地周辺の踏切の安全向上も図る。
建設費用は国際機関からの融資や民間投資、また政府債の発行などで調達される見込みだ。
ベトナム国鉄の既存路線約2000キロメートルは100年以上前のフランス植民地時代に設置されたため老朽化が進み、早急な整備が必要となっていた。現 在のレール幅は1メートルだが、新設される路線のレール幅は世界標準の1.435メートルを採用する。
鉄道計画を担う南部運輸エンジニアリング・デザインのドアン・ミン・ハイ総裁は「レール幅を広げることで鉄道の高速化を図る。時速120キロメートルでの走行も可能になるだろう」と期待を述べた。
ベトナム最大の都市ホーチミンは急激な経済成長に伴い人口も増加。交通インフラの整備が急務となっている。
今年6月には、日立製作所がホーチミンで18年に開業が予定される都市鉄道(メトロ)第1号線の車両や運行システム一式を、3億7700万ドルで受注。 ホーチミン市都市鉄道管理局は計6路線の都市鉄道の建設を計画しており、アジア開発銀行から5億ドル、スペイン政府から2億ユーロ(約268億円)が資金 供与されるなど、海外からの資金投入も加速している。
ホーチミンとハノイを結ぶ国鉄南北線(1726キロメートル、現在の所要時間約30時間)では、部分的に高速鉄道を建設する計画もあり、ベトナムの鉄道 インフラ整備への需要は今後ますます高まることが予測され、国内外の関連企業にとってビジネスチャンス拡大が期待される。(シンガポール支局)